全体最適化のための建設ICT勉強会:実施報告

BIM/CIM

1.セミナー概要

  • 日時
    令和7年2月20日(木)13:00~16:30(受付 12:30~)
  • 場所
    建設研修センター(岩手県盛岡市松尾町17-9 建設会館3F)
  • 対象
    県内の建設産業関係者、県市町村技師 等
  • 主催
    いわて建設ICT活用協議会
  • 参加者数
    約100名

 当勉強会は、建設現場におけるICT(情報通信技術)の活用を促進し、生産性向上や働き方改革など「全体最適化」を目指す目的で開催されました。岩手県の建設ICTの現状や事例紹介、フリーディスカッションなどを通じて、発注者・設計者・施工者それぞれが抱える課題と今後の取り組みについて議論が行われ、100名近い参加者が熱心に聴講していました。

2. 講演・事例紹介

1.岩手県の建設ICTの取り組みの現状と課題

岩手建県土整備部設技術振興課主任 小野寺良忠 氏
岩手建県土整備部設技術振興課主任 小野寺良忠 氏

 岩手県県土整備部技術振興課の小野寺氏より、県内におけるICT施工の取り組み事例や、BIM/CIM活用の現状が紹介されました。ICT活用工事として発注されていない工事でも受注者の提案により取り入れられるなど、活用範囲が拡大していることが報告されました。

2.岩手県内での小規模ICT施工活用事例紹介

株式会社小原建設 板垣大樹 氏
株式会社小原建設 板垣大樹 氏

 株式会社小原建設 板垣氏より河道掘削や築堤でのICT建機活用、起工測量へのUAVやレーザースキャナーの使い分けなど、小規模工事ならではの工夫が紹介されました。降雪状況などを考慮しつつ従来型とICTを使い分けることで、施工効率や品質を高めた事例が示されました。

3.技術製品紹介:「Smart Construction ダッシュボード」

コマツ岩手株式会社 小原 徹 氏 ,コマツカスタマーサポート株式会社 小張 優樹 氏
コマツカスタマーサポート株式会社 小張 優樹 氏、コマツ岩手株式会社 小原 徹 氏

 コマツ岩手株式会社・コマツカスタマーサポート株式会社より、3次元データを用いた数量計算や進捗管理・データ連携の自動化などについて紹介がありました。クラウドベースのシステムのため、通信環境があれば現場や事務所を問わず活用可能である点が注目されました。

3. フリーディスカッション

 「なぜICT活用工事が進まないのか?」をテーマに、設計コンサルタント会社、建設会社、ベンダーなど、川上から川下までの実務担当者による活発な議論が行われました。

  • 設計・施工間の連携不足
     設計図面が着工段階で別フォーマットになっているため、施工者側が3次元データを一から作り直すケースが多い。設計段階で取得したデータを施工段階にスムーズに引き継ぐ仕組みづくりが求められる。
  • 3次元設計に対するメリットの不透明感
     設計を3次元化するには手間がかかる一方で、事業者側がその恩恵を十分に理解できていない面がある。メリットの共有や成果物の標準化が課題。
  • データ連携とセキュリティ
     設計~施工~建機メーカーまで3次元データを一気通貫で活用するのが理想だが、セキュリティやソフトウェア環境が統一されていないなどの理由で運用が難しい。その解決策として「ASP(情報共有システム)」やクラウドのダッシュボード活用が期待される。
  • 人材不足と教育
     建設ICTに関する知識・技術力のばらつきが大きく、人材不足が深刻。ICT施工の普及には教育環境や研修機会の拡充が不可欠。

4. 総括と今後の取り組み

 本セミナーを通じて、建設ICTの活用は確実に進展している一方、技術面や運用面、そしてコスト負担など、多くの課題が依然として存在することが改めて浮き彫りとなりました。参加者間の情報交換は、今後の技術普及や業界全体の効率化に向けた貴重な示唆を提供するものであり、今後の取り組みに対する強い期待が寄せられています。

 いわて建設ICT活用協議会は、成功事例の共有や定期的な研修会を通じ、業界全体の技術普及と効率化に寄与するとともに、政府や関係団体との連携を深め、建設生産システムの全体最適化を目指してまいります。

 今後とも、宜しくお願い致します。

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